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2018/01/29 16:16


 みなさまこんにちは。

 今日もご覧いただきありがとうございます。


 突然ですが、コスチュームジュエリーに欠かせないパーツといえば、ビーズ。


 日本では「ビーズ」と聞くと、「子どものおもちゃ」とか、「手芸のための材料」とか、なかなかジュエリーとイメージの結びつかない方が多いように思えます。

 かくいう私もその一人でしたが、この深くて広い「ビーズ沼」にどっぷりと浸かった今では、そんな世間様のイメージがちょっと悔しかったり切なかったりします。


 最近ではスワロフスキーのみを使用したビジューアクセサリーや、天然石をたっぷり使ったジュエリーを手作りされる方も多いのですが、やっぱり相変わらず「ビーズ」となると、何となくジュエリーの材料として見てみぬふりをされているような気がします。

 (あくまでも私感です)


 国産のシードビーズ(種のように小さなガラスビーズ)を敬愛し、多く作品に取り入れている私としては、何とかこの「ビーズ」のイメージを払拭したく、そして日本のビーズ製造の技術もすごいんだぞ!ということを高らかに宣言したく立ち上がろうと、まずは皆さまにビーズの歴史から知っていただければと考えた次第。と思って調べてみたら、私も知らないことだらけでした。

 

 世界最古のビーズは遡ること、10万年前!

 数字で書いたら、100,000年前!!!

 前置きが長くなりましたが、【 ビーズはじめてものがたり 】はっじまーるよー!!!!!


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 そもそもビーズ ― 英表記で『 beads 』の言葉の起源は、アングロサクソン語で

 

 『 biddan 』(祈る)

 『 bede 』(祈る人)

 

 であるといわれています。

 

 ビーズは本来、キリスト教会で使われるロザリオに使用する数珠玉であったことに由来し、神聖なもので宗教的に敬意を表すためのものでした。祈りのためのビーズは、世界の半分以上の宗教で使われているそうです。

 

 これまで世界最古の装飾品としてのビーズは、7万5千年前の南アフリカ・ブロンボス洞窟で発掘されたものだとされてきました。

 しかし2006年6月23日、アメリカの科学誌「サイエンス」にイギリスのロンドン大学の研究チームが掲載した調査により、イスラエルとアルジェリアの遺跡から出土した中心部分に穴の開いた1.5センチ~2.0センチの小さな3つの貝殻こそが、約10万年前の人類最古となるビーズだと判明。

 海から離れている地域であること、自然に穴が開くような箇所ではない部分に穴が開いていることなどから、装飾のためのビーズとして貝殻が持ち込まれたのだと考えられたようです。

 

 じゅうまんねん。

 私の頭の中はカオスになりそうな、途方もない数字です。

 ギャートルズの時代か?(ギャートルズ知ってますか?)


 ちなみに国内最古のビーズとされているのは、北海道。

 約2万年前の旧石器時代の遺跡(美利河遺跡、湯の里遺跡など)から出土した、カンラン岩(火成岩の一種)の玉類がそうであるといわれています。カンラン岩は北海道内の岩石ではないため、大陸から持ち込まれたものである可能性が高いとのこと。

 旧石器時代の北海道って、どんな土地だったのでしょうね。

 ギャートルズ?(ドテチン?)


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 貝殻などがビーズとして使われていた時代からぐっと時間は進み、ビーズの主流である「ガラスビーズ」が誕生します。古代エジプトの時代から存在したといわれていますが、詳細はまだ不明。

 紀元前200~300年頃には直径5ミリ以下のガラスビーズがインドで盛んに作られるようになり、1200年頃になると中国でも製造されるようになりました。


 ヨーロッパでも11世紀にはガラスビーズの製造が始まっており、イタリア・ヴェネチアでは宝石のイミテーションとして使われていたそうです。「ビーズって所詮イミテーションでしょ」みたいなイメージの人もいるかもしれませんが、イミテーションなめたらあきまへんで。格付けチェックでも伊勢海老とザリガニの区別がつかない芸能人もいたでしょ。そういうことです(どういうことだ)。


 15世紀になるとガラス製造技術の流出を恐れたイタリア政府が、職人たちをムラーノ島へ強制移住させました。「島から脱出する者には死罪」という政府の強固な政策が、結果的に今日の細やかで気品のあるヴェネチアングラスの技術を昇華させた一因になったと言っていいでしょう。

 きっとドラマティックな出来事も多かったと思います。ヴェネチアングラスについては、また後日。


 16世紀になると、チェコのボヘミア地方でもビーズ専用の溶鉱炉が設置されるなど、ガラスビーズの製造が盛んになりました。

 チェコもガラスビーズの生産大国。色が綺麗で私も大好きです。高熱をあて、表面をほんの少し溶解させたことにより、独特の艶を表現したFP(ファイヤーポリッシュ)というビーズが有名です。

 チェコビーズはチェコビーズで、今後きちんとご紹介せねばなりませんな。


 話が脱線しながらですが、さらにその後、17世紀にはオランダ・アムステルダムでもガラスビーズの製造が盛んになります。

 産業革命が拡大した1830年以降になるとシードビーズのサイズも豊富になり、機械による大量生産が始まりました。


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 ヨーロッパではそうして広まったガラスビーズですが、日本ではどのように存在していたのでしょうか。

 旧石器時代から時計を進めると、どうも弥生時代中期頃にガラスの勾玉が国内で作られていたのではないかという説があるそうです。弥生時代後期の遺跡からはガラス炉跡と考えられるものが見つかっているそうなので、そうなると日本でも2千年前から国産のガラスビーズが存在していたことになります。


 京都の正倉院には数十万個のガラス玉とともに、ガラス玉の製造のための原材科・燃料などを記した8世紀頃の文書が収蔵されています。正倉院のガラス玉は科学的な検査でなんやかんや調べたら、成分が国産であることが確認されているそうなので、要するにガラスビーズは世界中のいたるところで、その土地の素材を使って独自のデザインと技法で作られていたと考えられます。


 先のヨーロッパで製造されたガラスビーズが日本へ伝わったのは、江戸時代。鎖国下でも交易のあったオランダや中国を経由して、ヴェネチア産やオランダ産の「とんぼ玉」が入ってきました。

 「オランダ玉」などと呼ばれ大変人気が高かったというガラスビーズは、南蛮貿易を通じてその技術が伝わった長崎のガラス職人が最初に国内で作り始めたそうです。そしてその後、大阪、京都、江戸へとその技術が伝わっていきました。


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 現在、ガラスビーズは様々な国で作られていますが、種のような小さなシードビーズを生産している国は、日本、チェコ、フランス、インドの4か国だけです。


 そして、日本国内でビーズを製造しているメーカーは以下の3社です。


  トーホー株式会社

  株式会社MIYUKI

  松野工業株式会社(松野グラスビーズ)



 どのブランドも世界トップクラスの品質で、規格の良さでは他の国のビーズに比べて圧倒的と評価されています。国産ビーズに関しては改めて詳しくご紹介しますが、とにかく日本産ビーズの均一さは見事なものです。すごいでしょ、奥さん。


 もちろん、チェコやフランス、インドのビーズも形や穴の大きさが不均一だからこその味わいがあります。ですので、作品の部位によって国産ビーズと輸入ビーズを使い分けたりしているのですが、テグスや糸を通しやすかったりという点たけでも、ついつい国産ビーズを使ってしまいます。決してえこひいきではないのですからね、奥さん。



 で、そんな優良国産ガラスビーズのメーカーの皆さまですが、その市場はほぼ外国です。輸出産業です。

 松野工業さんにいたっては「素材として国内で手に入れるのは無理っす」くらいの勢いです。


 それだけ海外での日本産ビーズの評価が高く、素材として取り入れているブランドが多いということなんですが、私としてはその評価を日本にいる人にももっと知ってほしいというのが率直な気持ちです。日本のビーズは、職人さんたちが魂を込めて必死に生産している「超ブランド品」なのですっっ。あの高級ブランドのあの部分に使われているのですっっ。


 紀元前とか、15世紀とか、外国では遥か昔から製造され続けてきたシードビーズですが、上記の国産メーカーの創業はすべて戦後です。まだ100年にも満たない企業ばかりです。インドとかに比べたら、よちよち歩きもいいところ(時間の長さのことです)なんですが、それでもここまでの技術を確立し、今なお日本の「ビーズ」は進化し続けているのです。



 ビーズの10万年の歴史を辿ったら、結局最後は日本ってすごくない?みたいになりましたけど、それも含めて歴史ってことです。

 「このひと粒に、じゅうまんねんの時間と想いが込められているんだよ」とか考えるとテグスを編む手が震えそうですが、でも本当にそうなのだと思います。島に閉じ込められた職人さんたちの怨念とか(違う)、ずっしり肩にのしかかってきますもんね(だから違う)。


 ビーズの歴史がつまびらかになったところで、きっと皆さま「ビーズマジ最高」とお祭り状態になってくださっていると確信しておりますが、ビーズの種類は数えきれないほど存在し、それぞれ個性を持っています。今回スワロフスキーにはちょっとも触れませんでしたしね。

 次回(いつ?)はそんな色々な種類のビーズをご紹介できたらと思います。


 ご清聴、ありがとうございました!




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